整形外科

 整形外科は運動器の疾患を扱う診療科です。運動器は身体活動を担う神経系・筋・骨格の総称です。もちろん、消化器、循環器も身体活動には重要ですが、それに加えて運動器が十分に働くことで質の良い活動ができます。脳で考えたことを実行するのが運動器です。運動器がうまく働くことで世界が変わります。養老孟司先生の「脳化社会」も運動器があってこそです。コップをつかむという動作をする際に、眼で手からコップまでの距離を認識し、脳の運動野が電気的な信号(インパルス)を発し、脊髄に伝わります。一連のインパルスで脊髄の運動神経の細胞(前角細胞)が興奮し、それによって発生した新たなインパルスが末梢神経から筋肉に伝達され、筋肉が収縮します。コップをつかむ場合は、指を曲げる筋肉が主に収縮しますが、指を伸ばす筋肉も関係します。また、手をコップにまでもっていくために、肩や肘を動かす筋肉も必要です。指の関節の開き具合やコップの手触りを脳に伝える感覚神経にもインパルスが生じ、脊髄から脳に伝わり、コップを握る力加減を調整します。したがって、運動器は脳から始まり、脳で終わるといえます。脳から手までの神経がさまざまにやり取りし、脳でいろいろな微調整をすることで初めて、手のなめらかな動きが可能になります。脳から手までのどこかに問題があれば、なめらかにコップをつかむことができません。手の挫創や肩の打撲などの外傷、脊髄や神経の病気、関節リウマチなどの炎症、どれをとっても手のなめらかな動きに支障をきたすでしょう。整形外科はこれらの疾患の診療をおこないます。正確な診断のために腱反射や感覚障害の部位などを調べ、レントゲン写真やエコーなどの画像検査はもちろんですが、当院では神経の電気的な反応をとらえて病変を確定する筋電図検査をおこなっております。痛みやしびれ感などの症状があれば、必ず原因があります。いくつかの検査を組み合わせて、その原因をつかみ、的確な診断のうえ、適切な治療をおこないます。